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尾張:実はFZ10ですでにカメラマンの反感は買ってるみたいなんですよ。僕はレースのスタート時には第1コーナーにいることが多いんです。それはカメラマンたちも同じ。そしてF1のコースサイドで撮影できる場所というのは限られているんです。大体フェンスがあって、その一部にレンズを通せるように穴が開いている。最初のころは、僕が第1コーナーに行くと、カメラマンたちも穴のある場所を譲ってくれたんですよ。僕が持ってるカメラを見て、『コイツは大したことないな』と思って。でも、実はFZ10は420ミリの望遠が使えるじゃないですか。だからカメラマンたちに負けない写真が撮れたりする。そうしたら、次第にそのことがカメラマンにもばれてきてしまって…最近は譲ってもらえなくなっちゃいました(笑)。
仕方なく僕はその撮影ポイントから外れるんですが、それでもFZ10なら撮影できちゃうんですね。先ほどフェンスに穴の開いたポイントは決まっているといいましたよね。それは一眼レフの太く長い望遠レンズにとってフェンスが邪魔になるということなんですが、FZ10ならレンズも小さいのでフェンスを気にせず撮れてしまう。逆にカメラマンとは違うアングルでいい写真が撮れちゃったりするんですよ。
![[写真]尾張正博さんと房忍さんの対談風景 その3](img/pic_09.jpg)
房:ずいぶん望遠もお使いになられているんですか?
尾張:はい。420ミリが使えることで、ずいぶん絵作りも考えるようになりましたね。例えば写真(7)はモナコで撮影したものです。モナコは一番コースに近づけるところなんですね。僕なんかだと怖いぐらいに。この写真もちょうど自分に向かってマシンが走ってくるようなところなんです。だから僕はカメラマンの後ろのほう…彼らはギリギリまで寄りますから…ちょっと離れたところから望遠で撮影しているんです。
房:それでも、この写真は望遠が効いていて、迫力がありますよね。
尾張:資料用の写真を撮るときも、望遠が大きな武器になるんですよ。例えばピットの中の写真を撮ろうとしますよね。被写体として狙っているのは、マシンのメカニカルな部分、つまりチーム側は秘密にしておきたいところなわけです。それを一眼レフの望遠で狙ったら、何を撮ろうとしているかあからさまにわかりますよね。すると、チームスタッフに隠されてしまう。それがFZ10だと、『アイツはコンパクトカメラだから大丈夫だろう』って無防備なんですね。でも実は僕は望遠で狙っていて何枚も撮ってる、なんてことができましたね。でも、最近はそれもバレてきちゃいましたけど(笑)。
房:なるほど。そういう機動性が必要なんですね、取材のときは。
![[写真(7)]](img/pic_10.jpg)
![[写真]尾張正博さんと房忍さんの対談風景 その4](img/pic_11.jpg)
尾張:僕は年に何度も海外取材に出かけるんですが、荷物はやはり最小限にしたいんですね。それでもスーツケースが30kgぐらい、もう一つのバッグが10kgで、合わせて40kgぐらいになる。それがカメラマンになると、僕に加えて20kgのカバンが一つ増えるんだそうです。そしてそれは、そのまんまレンズなんですよね。
房:そうですね。FZ10はテレコンバージョンレンズをつけるだけで630ミリ相当にまで望遠できますが、それを一眼レフでそろえようとしたら、機材の数も相当になりますよね。でもカメラマンの方々は、コースにそのレンズを何本も持っていくんですよね。
尾張:そうですね。ジャケットに入るだけレンズを入れて、カメラ3台ぐらいかついでいます。写真を撮るためにはそれがベストなんでしょうが、それを僕がやったら取材できません。ベルギーGPのとき、レース終盤までゾンタ選手が4番手を走ってたんですね。それは彼にとっても、チームにとってもキャリア最高の成績が取れそう、というときだった。それが残念ながらリタイアに終わってしまったんです。さぞ残念がっているだろうとレース後に彼に話を聞きにいったら、思いのほか、うなだれてないんですよ。その顔を見ていたら、この清々しい表情を撮りたいな、と思ったんです(写真(8))。FZ10なら、そんなときでも話を聞きながら、その表情を見て、サッと写真が撮れる。カメラマンのように機材を抱えていたら、そうはいきませんから。
房:そういう意味でも、やはりカメラのサイズや重さというのは重要ですよね。
![[写真(8)]](img/pic_12.jpg)
![[写真]尾張正博さんと房忍さんの対談風景 その5](img/pic_13.jpg)
尾張:そうなんです。それと形。僕がFZ10で好きなのがグリップです。右手のひっかかるあたりが。片手でいつも撮れますから。滑らないし。
房:ありがとうございます。でも、それでもやはり長い間持っていると手が痛くなるんですよ。ですのでFZ20では、グリップをさらに深くしました。握りも柔らかくして、長時間使っても、なるべく疲れないようにしたのです。
尾張:やっぱりそういうのは開発される方が、実際に使って、進化の方向を決めていくんですよね。
房:もちろんそうです。使わなくちゃダメです。道具っていうのは、完成形がないんですね。使う側の欲求というのはどんどん高まっていきますから。それは、道具を使いこなしていった人間だけが感じる、その次の欲求なんです。すると、そこから次の改良が始まるということになるわけです。
![[写真]尾張正博さんと房忍さんの対談風景 その6](img/pic_14.jpg)
尾張:僕にとっては、FZ1が登場したときの、その進化のすごさというのが、とにかく驚きでした。光学12倍ズームになったし、手ぶれ防止機能もつきましたから。次にFZ10になったときは画素数もアップし、雑誌の印刷にも十分耐えられるようになった。これ(写真(9))は実際に雑誌で大きく使ってもらったものです。そして今度はFZ20ですよね。いったいあと何を進化させればいいんだろう、というふうに思ってしまうんですけど。
![[写真(9)]](img/pic_15.jpg)
