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Vol.02 高橋敬三氏[現トヨタ自動車(株)モータースポーツ部主査]に聞いた「風洞実験」って何?

ほとんどのチームが風洞施設を使っているのに、パフォーマンスに差が出るのはなぜ?

[Photo8]

モデルショップで組み立てられる、風洞実験モデル。正確なデータを収集するために、組立作業にも精巧さが求められる

――多少の差はあるとしても、基本的には特定の業者が建設した50%ないしは60%の風洞をほとんどのチームが所有しているににもかかわらず、どうして開発の結果に差が出てくるのでしょう?

高橋前DTC「風洞施設というのは、単なる器です。それをどのように使って、どのように実験するかで、出てくる結果は異なってきます。例えば、われわれは2003年から当時最新だった50%風洞を稼動させましたが、2004年はご存じの通り、失速しました。なぜなら、風洞実験の測定精度が高くなかったからです。風洞というのは、大きな測定装置です。そして、測定装置である以上、そこには誤差が生じます。例えば、あるスペックのパーツを実験にかけて10回測定すると、そこには必ず違いが出てきます。その差が限りなく小さければ、精度の高い実験だったといえます。逆にその誤差が大きいと、その誤差分だけ精度は不明瞭になります。先ほども述べたように、実験アイテムというのは、木々の枝葉のように複数のアイテムが細かく分かれています。しかし、測定精度が低いと、大きなパーツの結果に狂いが出てくるだけでなく、それに付随する細かなパーツのデータにも誤差が生じてくる。そうなると、開発は迷路に迷い込んだ状態となります。それが、2004年の序盤戦のわれわれでした」

――どのようにして、精度を上げたのですか。

高橋前DTC「すべてを見直しました。例えば、モデルカーの精度です。モデルカーというのは、パーツを取っ替え引っ替えしながらテストするため、実車とは異なった仕様で、あちこちにつなぎ目を作ってあるんですね。例えばディフューザーですが実車は1枚でできていますが、モデルカーでは何分割にも分かれています。でも、そうやってただ単純に細かくするだけだと、どうしてもつなぎ合わせの部分に段差が生じやすくなるんですね。それでは、正確なデータは測れません。どのように分割するのが効率的か、またどのようにつなぎ合わせるのがいいのかというように、モデルカーの作り方を見直したと同時に、それをモデルカーを取り付けるメカニックに対しても、何回やっても同じようにパーツを組めるように訓練しました。さらに、そのモデルカーを測定する装置も見直しました」

――では、60%の風洞だからといって、必ずしも50%の風洞よりも、いい結果を出すとはいいきれない?

高橋前DTC「そういうことです。もちろん、設備というものは最新のものに越したことはないですが、一番大切なことは、いかにその設備が持っているポテンシャルを引き出して使うかということ。だから、50%の風洞施設だからといって、われわれがライバル勢に対して、必ずしもひけをとっているとは思っていません。ましてや、それを2つ同時に使用していくのですから、アドバンテージになると思っています。ただし、設備はどんどん進化していきますから、われわれがいまの50%風洞を2つ持つアドバンテージは、おそらく1年か2年……。早く結果を出さなければなりません」

――期待しています。今日は、本当にありがとうございました。

[Photo9]

風洞実験にかけられるモデルカー。ムービングベルトはスチール、タイヤはラバータイヤで、コンパウンドも2種類あるのだという。そして、なんとブリスターも出るそうだ

[Photo10]

風洞施設のオペレーションルーム。風洞実験の精度が向上したことで、いまやTMGの製作する空力パーツは、実車テストをせずに実戦投入できるまでになっているという