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Vol.05 30年ぶりに富士にこだましたF1エキゾーストノート!日本GP 富士現地企画を徹底レポート!! VIP指定席当選者レポート

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Report03 せきやはいじさん 「2007年日本GP・土曜日パドックレポート」

私は、雨の予選が嫌いだ。

初めて日本GPに訪れた2003年、金曜日の暫定PPから一転、予選途中から降り出した雨になす術なくピットに入っていった水色のマシンの姿。シーズン終盤に投入されたTF105Bに乗るのを渋っていた2005年、アタックラップでデグナーのサンドトラップに放り出される姿。ヤルノの「一発の速さ」に魅せられた者として、一番見たくない姿だった。それでも心のどこかで、この人の「一発の速さ」があれば、もしかしたら、と、奇跡を信じている自分がいた。日本GPに来る度に。

御殿場線の始発を降りると、目に入るのは「16℃」の電光表示。前日までとの温度差に加え、週初めから風邪をひいていた身には堪えました。幸い、時間が早かったのもあって、さほど並ばずにバスに乗れましたが。サーキットに着くと、しとしとと降る霧雨が時折勢いを増す、あいにくの天気。Panasonicタワーの前で速報新聞とステッカーを貰いパドックへ(そういえば今年のPanasonicタワー、昨年は3面ともラルフだったのにこっそり文句を言っていたら、今年はすべてヤルノでした。うれしかったですが、個人的にはライトアップの演出も込みで、05年のものが一番好きだったな。二人とも平等に扱ってくれたし)。パドッククラブへ行く途中、パドックの入口を通りかかったら、ちょうどヤルノが出勤してくるところでした。

[写真1]

フリー走行の前に、特別にパスをお借りして、普段は入れないピットの中を見学。ウォーマーに包まれたタイヤの林立する空間は、その場にいるだけでぽかぽかと暖かかった。お願いしてウォーマーにも触らせて貰いましたが、手で触った温度は電気毛布のようでした。迷路のようなピット裏を抜けて、いつもスタンドから見ているガレージの中へ。カウルが外されたF1マシンの内部はキラキラしていて、芸術品のような美しさに涙が出そうになりました。これくらい研ぎ澄まされていないと、時速300kmなんてとても出せないんだろうな、と。

午前のフリー走行はトヨタのパドッククラブの中から観戦。事前に、「このガラスの中からエンジン音を聞くと凄く不思議な音がするんですよ」と次田プロデューサーに教えていただいていたのですが、聞こえてきた音は確かに「ふぃよぉおぉぉん」とも、「ゎよぉぉおぉんん」ともつかない、エンジン音の高音部分だけ抽出してエコーをかけたような、テクノサウンドの効果音のような、不思議な音でした。が、それも数周走ったところでほとんどのクルマがピットへ。遠くを見ると、ピットの出口の信号がやっと見えるくらいの濃い霧。窓際でクルーがクルマを押してガレージへ入れるのを見下ろしていると、ピット前に張られたロープのところまで、ヤルノがひょっこりと現れました。テレビカメラとマイクを向けられて何か話している姿は、レーシングスーツを着ていなければ普通の「お兄さん」。この人がさっき見たマシンに乗って、時速300kmで走っているという事実が、いまいちぴんと来ないというか、自分の中で未だに映像がつながりません。何度かセッション開始が延長された後、結局フリー走行は中止に。

木曜日とはまた違うピットウォークを堪能し、おいしいランチとシャンパンを味わい、ピットの映像を解説するモンタニーのトークを楽しむ……いつもと 違うセッションの合間。ガラス越しに向かいのグランドスタンドを見ると、小雨の中レインコートでうずくまる人が大勢いて、普段は自分も向こう側にいるんだよなあと思うと、不思議な気分でした。ただやはり、雨に濡れずに観戦できるのはありがたかった。次田プロデューサーは「(マシン特有の)匂いがないのが気に入らない」とのことでしたが……。そして予選。パドッククラブの裏手に専用の観戦席がありますよ、と案内していただいたのですが、第1ピリオドは午前中同様、パドッククラブの窓際で観戦していました。マシンがピットに出入りする様子を写真に撮りながら観戦していたのですが、終了間際にラルフと山本左近が接触。映像が映し出された瞬間、落ち着いた雰囲気の室内が一瞬だけざわつきました。

[写真2]

「ラルフ、第2ピリオドは出られないんですか?」
「多分無理でしょうね」

第2ピリオドが始まる直前、私はカメラをつかんで外へ走りました。室内で呑気にお茶しながら見ている場合じゃないような気がして……。遅い足で必死に走って辿り着いたのは、教えて頂いた観戦席。すでにセッションは始まっていました。パドッククラブの観戦席は、1コーナーを回りこんで短いストレートを駆け下り、コカ・コーラコーナーを立ち上がったところまで一望できる、眺めのいい席でした。これで天気が良かったらなあと贅沢なことを思いましたが、それよりもヤルノのことが気がかりでした。第2ピリオド終了間際、コカ・コーラコーナーをくるんと回って消えていく銀色のヘルメットを、祈るような気持ちで見送りました。双眼鏡を持っていなくて、ビジョンの順位表示が読めなかったので、第2ピリオドが終了してエンジン音が聞こえなくなるのを待ちました。静まり返ったコースに順位を告げるアナウンスが流れるのを、祈るような気持ちで聞いていましたが、上位10人の中にヤルノの名前はありませんでした。

だから、雨の予選は嫌いなんだ。

もしかしたらほかにも原因があったのかも知れませんが、あの時思い出したのは雨でふいにした過去2回の鈴鹿の予選でした。室内に逃げ帰りたくなりましたが、結局、ヤルノのいない最終ピリオドをその場で観戦し続けました。最後のアタックを終えたアロンソが手を振りながら自分の目の前を通り過ぎようとした時、ハミルトンの逆転ポールを告げる実況が響いてきたのには、思わず笑いそうになりましたが。その後、まさに『半べそ』の状態でとぼとぼとパドッククラブに戻ってきた自分は、あの場に一番不釣合いだったと思います。そんな気分を明るくしてくれたのが、セッション終了後にパドッククラブを訪れてくれたラルフでした。ミーハーな自分はラルフを間近で見られるのがうれしくて、当初は素直に喜んでいました。しかし、やはり予選の順位が不本意だったのか、珍しく髭を生やしていたせいか、写真を撮られるときの笑顔にも張りが無いように見えたのが気になりました。決勝日の朝にイベントブースに来てくれたときも、どこか目がうつろに見えて、大丈夫かなと思っていたのですが……ラルフがトヨタを離れることを知ったのは、月曜日に帰宅してからでした。

パドッククラブのクローズまで、同行してくれたヤルノファンの友人と次田プロデューサーと散々語り、帰り際にテラスからパドックを見下ろすと、子供たちと一緒に記念撮影をするヤルノの姿が見えました。ピカチュウのぬいぐるみをプレゼントされていたのが可愛かった。彼らの目に、ヤルノはどんな風に映っていたのか、そして大人になったとき、この日のヤルノの事をどんな印象で覚えているのか。いつか聞いてみたい気もします。

うれし涙は来年以降にお預けになってしまいましたが、ヤルノの仕事場を僅かながら肌で感じられた、またとない貴重な体験ができました。あの日の自分は、日本一幸せなヤルノファンだったと思います。

[写真3]

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